米ドルに最も影響のある経済指標と聞けば、ほとんどの人が米雇用統計というでしょう。
ただ雇用統計はアメリカの毎月の労働者数の増減を発表するだけで、為替レートには全く関係ないように思えます。
しかし雇用統計の結果を重視して、政策金利を決定する機関があります。その機関とはFRB(連邦準備制度理事会)です。
このFRBが雇用統計を一番重視することにより、アメリカでは雇用統計が最も影響のある経済指標になりました。
FRBは様々な市場操作を行っていて、市場操作の一つに政策金利があり、政策金利を決定して市場の金利を調整しています。
この政策金利を決定するのが、米FOMC(連邦公開市場委員会)になります。
米FOMCが開催される理由

FRBは、アメリカ経済を安定的かつ持続的な経済成長が続けられるようにするのと同時に、インフレーションを起こさないように物価上昇を抑えるようにしています。
そのため景気の過熱や減速を避けるために政策金利を決定して景気を調節します。政策金利決定はアメリカ経済に大きな影響を与えるためFRBの議長だけでの判断ができず、FRBの理事と他地区の連邦準備銀行の総裁が委員として、政策金利の議論をします。
ここで重要なのは金利が景気にどう影響するのか?また物価にどう影響するのか?です。金利が上がった場合
- 金利負担が増える分、購買意欲が減退して物が売れなくなり、物価上昇を抑えることになります
- 企業経営者は金を借りて事業を拡大すると、金利負担が増える。
→事業拡大のメリットが薄れリスクが高まるので、事業拡大を控えて景気の過熱感を抑えられる。金利が下がった場合
- 逆に金利が下がれば購買意欲が高まって物価が上昇しやすくなります。
- 金を借りて事業を拡大しても金利負担が少ない。
→事業拡大意欲が高まり、景気が上向きになりやすくなる
米FOMCの開催日程

FOMCの開催は年8回、2日間に渡って行われ、政策金利は全委員の投票の多数決の結果で決まります。2018年の開催日程(日本時間)
- 1月31日(水) ~ 2月1日(木)
- 3月21日(水) ~ 22日(木) 22日(木) 3:30からFRB議長の記者会見(予定)
- 5月 2日(水) ~ 3日(木)
- 6月13日(水) ~ 14日(木) 14日(木) 3:30からFRB議長の記者会見(予定)
- 8月1日(水) ~ 2日(木)
- 9月26日(水) ~ 27(木) 27日(木) 3:30からFRB議長の記者会見(予定)
- 11月8日(水) ~ 9日(木)
- 12月19日(水) ~ 20日(木)
過去の金融政策と米ドルの動きについて

FRBの過去の金融政策ですが、量的金融緩和政策(Quantitative easing、QE)という金利だけでなく通貨供給量を増やす政策を行っていました。
これは日銀の異次元緩和の手法を真似て、金利を下げるだけでなく国債などの有価証券を購入して市場に資金を供給していました。
この金融政策を欧州も行ったことから、日銀の円安誘導の効果が薄れて、円安から円高になっていきました。
FRBはドル安を求めていなくて、あくまでも物価上昇率を2%台に上昇するように資金を供給していただけですが、副作用的に円に対してドル安になり、ドル安効果が貿易赤字の抑制と輸出の拡大になり、アメリカの景気回復を後押ししました。
2013年にFRBは、アメリカ経済が緩やかに回復してきたとして、テーパリング(国債購入額の段階的縮小)を始めて、2014年に量的金融緩和政策を終了します。
量的金融緩和政策を終了後からFRBは金融政策を引き締めに転換します。この金融引き締め政策がドル安からドル高に流れを変えました。
FRBは為替レートを誘導していないので、為替レートの変動を無視して段階的にフェデラル・ファンド(Federal Funds)レートを少しずつ上げていきます。
FFレートが上がりそうになると為替相場でドルが買われてドルは一時114円台にまで上昇します。さすがにドルが買われ過ぎとその後ドルは下げに転じましたが、強いアメリカ経済がドルを下支えして、利上げのペースが遅くてもドルは堅調に推移しました。
ここで重要な点として、FRBが利上げは小刻みにしか上げていない点と米ドルは長期金利の動きに合わせて変動していて、短期金利で動いていない点があります。
【 なんで利上げは小刻みにしか上げないの?FFレートを上げなくてもいいのでは? 】
【 そうしてほしいのは分かるけど、これには結構ややこしい話があるのよ…… 】
FRBの利上げが小幅な理由
中央銀行が利上げとなると、普通は公定歩合で、実際に新興国の中央銀行は公定歩合を上げています。
FRBが公定歩合を引き上げないで短期金利のFFレートを小刻みに上げているのは、FOMCで利上げを見送りたいハト派と利上げを行いたいタカ派の勢力が均衡していて、妥協的な感じでFFレートでの利上げに踏み切っているためです。
アメリカ経済が活況になってきたとはいえ、物価上昇率がそう高くなく、景気過熱感が乏しいためインフレが進まない状態になっています。
FRBの議長は、利上げによる景気減速を恐れながらも利上げをしたくて、慎重にタイミングを計っています。
そんな中アメリカのトランプ大統領が利上げによる景気減速やドル高を嫌い、FRBに圧力をかけて普通は一期で終わらないFRBの議長の任期の習慣を覆して、イエレン議長を一期で退任させてパウエル議長に代えさせました。
パウエル議長も景気の過熱を抑えて緩やかな経済成長を目指すために利上げを行いたいけど、イエレンの二の舞になりそうで、強い経済指標が出て利上げが正当化されるようなことが無いと、利上げに踏み切る可能性は極めて低いといえます。
米ドルは長期金利の変動次第為替相場には金利が大きく影響していて、米ドルに関しては米国債の10年債の利回りが最も影響しています。
FOMCの政策金利は短期金利で、日本でいうと無担保コールの金利になります。期間からいってあまりにもかけ離れているため、FFレートの利上げが10年債の利回りに大きく影響しているとは思えません。
しかしFOMCで利上げが示唆されると10年債利回りが急上昇します。この上昇理由ですが、市場参加者が過剰に反応して長期金利も上昇すると考えて、米国債を売っているからです。
本来なら米国債は流動性が高く人気もあるので、値を下げにくいですが、株高で債券が売られやすくなっているため、債券価格が下がりやすくなって利回りが上昇しやすくなっています。
米FOMCの決定は為替レートに直接反映しないですが、結果的に為替レートに大きく影響していると考えられます。このことから米FOMCが利上げをすればドルが上昇するけれど、持続性はその後の相場次第ということです。
併せて確認しておきたい指標は?
アメリカの経済指標はいろいろあって、為替レートに影響を与えるものほど重要な指標扱いになっています。
ただこれは米FOMCの決定に影響を与えるものほど重要なわけで、決定に影響を与えるから為替レートも先行して動くというわけです。
ですから米FOMCの決定に影響を与える指標も政策金利を予測するのに重要だと思って、米FOMCの政策金利と併せて確認しておくべきです。参考にしたい指標
- 米雇用統計
- 失業率
- ADP雇用統計
- 個人消費支出(PCEコア・デフレーター、食品・エネルギー除く)
- ISM製造業景況指数
- 小売売上高 (前月比)
- 新築住宅販売件数
- 米雇用統計は、結果がFOMCの判断に大きく影響してきますから、ぜひとも確認しておきたい指標です。
- 失業率も1と同じ理由です。
- ADP雇用統計は直接的には政策決定には影響しませんが、雇用統計の結果を予測するのに利用します。
- 個人消費支出は、数字が高ければ今後の物価の上昇が見込まれて、インフレを抑え込むための利上げが予想されます。
- ISM製造業景況指数は、数字が強ければ景気が過熱気味と考えられて、景気の拡大を抑えるための利上げが予想されます。
- 小売売上高は、5と同じで数字が強ければ利上げの判断材料になります。
- 新築住宅販売件数は、数字が強ければ景気が過熱気味として、利上げの判断材料になります。
次回発表時の予想

次回発表時の予想はブルームバーグではこう予想されています。(2018年9月26日掲載)
米金融当局は25、26両日の連邦公開市場委員会(FOMC)で今年3回目となる利上げを決める見通しだ。
さらに、会合後に公表する四半期ごとの経済予測は、12月に追加利上げした後、2019年も漸進的なペースでの利上げを継続するとの見通しを裏付けることになると見込まれている。
FOMCが今回、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.25ポイント引き上げて、この10年余りで最も高い2-2.25%とするのはほぼ確実な情勢。
連邦準備制度理事会(FRB)は米東部時間26日午後2時(日本時間27日午前3時)にFOMC声明と経済予測を公表し、2時半からはパウエルFRB議長が記者会見する。
トランプ大統領が利上げ批判を繰り広げたのを受け、会見では政治的圧力についての質問も予想される。
最新の経済予測では、個々のFOMC参加者の金利予測をドット(点)で示す分布図「ドット・プロット」も更新される。
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのシニアエコノミスト、サム・ブラード氏は
「ハト派寄りだったドットの幾つかはやや上方移動する公算が大きい。力強い統計発表を踏まえて漸進的な引き締めをさらに進めるコンセンサスが広がりつつあり、当局者は金利見通しに自信を持つだろう」と語った。
6月の前回予測を見ると、今年の利上げ回数を4回以上と予想したのは8人、3回以下としたのは7人とほぼ均衡していたが、最新予測はもっと一方に傾いたものとなる可能性がある。
また、今回は8月に上院の指名承認を受けたクラリダFRB副議長が加わって、各予想対象年のドットの数は計16に増える。
金融当局者のうち過去10年間にわたりハト派の1人と目されてきたシカゴ連銀のエバンス総裁は14日、「データが極めて強い数字となっているため、今年の利上げ回数が4回であっても意外ではないだろう」と述べた。
同総裁は同日の段階で、まだ見通しを最終確定していないと話していた。
このほか、ブレイナードFRB理事も従来のハト派から、一段とタカ派基調に発言内容が転じつつある。
同理事は今月、景気を刺激も抑制もしない中立金利について、短期的な金利水準は成長加速に伴って上昇している可能性があるとの見方を示した。
6月のFOMC予想中央値は20年時点のFF金利を3.4%としており、ブレイナード理事はこの点に関し、長期的な中立金利の推計値である2.9%より高めだと指摘した。
グラント・ソーントンのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は
「19、20両年の見通しの一部が上方移動する公算が大きい。ブレイナード理事の見解がどの程度、他の理事の間に浸透し、中立金利推計が上方シフトしているか興味深い」とコメントした。
まとめ

今回のポイント
- FRBが金利政策について決定するのがFOMC
- FOMCは年8回。その内の3回はFRB議長の記者会見がある
- 利上げについては、一気に上がることはなく小刻みに上がる
米FOMCの政策金利の予測ですが、まず不十分な情報での予測は間違いやすいので、情報収集に力を入れるべきです。
ただ個人では得られる情報が限られている問題があります。この情報不足を改善する方法として、エコノミストたちの解説を探して読むことです。
エコノミストたちの解説には判断材料も一緒に書かれていますから、知らない情報を得られると同時に考え方やヒントも得られます。
しかし予測できたとしても二つの問題があります。
一つは常に正しい予測ができるとは限らないこと。もう一つは予測が正確でも取引のタイミングまではわからないこと。
常に正しい予測ができるとは限らない問題ですが、部外者である以上当事者でないとわからないものが多く、どうしても情報不足のまま予測せざるを得ないので、取引判断に活かす場合は、予測が外れたときに備えておく必要があります。
早めに損切りができるようにしておくこととポジションを取り過ぎて損失を出し過ぎないこと。
損切りの後どう取引するかも考えておくべきです。取引のタイミングの方ですが、早過ぎると予測結果が変わった場合ポジションを入れ替える必要があり、遅過ぎると市場が先に織り込んで収益チャンスを失うことになります。
タイミングの取り方としては、政策金利を決定しそうな経済指標の発表後に取引を行うのがベストです。
ただ為替相場には絶対は無いですから、これも予測の逆になった場合に備えて、過剰にポジションを取らないで、予想外の結果に対処できるようにしておく必要があります。
読者様へ
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なおこちらの内容はhttps://www.projectcairo.orgを参考にしております
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